JESUS DAYS

ART/CULTURE

JESUS DAYS

”神様とともに”過ごした時代の記録

Photos: Greg Reynolds / Interview: PERISCOPE

もう何十年も前、グレッグ・レイノルズは、喫煙も、飲酒も、婚前のセックスも、罪だと考える敬虔なクリスチャンだった。40年後のグレッグは、ブルックリンを拠点に活動するフォトグラファーで、カムアウトしたゲイの男性である。グレッグは、自分がInter-Varsity Christian Fellowshipという、全米の500以上の大学に支部を持つ伝道組織のメンバーだった。最近、グレッグは、見つけた写真を編集し、「ジーザス・デイズ」と題するZINEにまとめた。

昔の写真がつまった箱を見つけたとき、どんな思いが心を駆けめぐりましたか?
実家のクローゼットで見つけた埃まみれの箱は、まるで別の人生から出てきたもののようだった。中に入っていた写真を撮ったのはもう30年以上も前のことで、昔の写真から思い出されるあの頃の僕と、今こうしてヴィジュアル・アートの仕事をして、ゲイだということをオープンにしている僕の人生との間には、何のつながりもないように思えた。以前は、1978 年から1983年のことを思い出すときには恥ずかしさや気まずさがあったけれど、何十年という月日がたった今では、気持ちに余裕をもって、これまでとは違う、新しい視点で当時のことを振り返ることができるようになった。
作品にしようと思ったのはなぜですか?
写真は、20代のとき、保守的なキリスト教団体で青年部の牧師として働いていたときに撮ったもの。撮らなければいけなかった、または撮りたかった写真だった。誰かを感動させるためではなく、むしろ自分の喜びのために。フォトグラファーになりたいとか、本として出版しようなんて考えたこともなかった。こうやってもう一度写真を見返してみると、なかにはかなり力強い写真があることに気がついて、もしかしたら興味をもってくれる人がいるかもしれないと思うようになった。まわりに見せてみると、期待していた以上の反応があった。それで、まずはZineを作って作品を紹介するところから本格的な出版にむけて動き出してみようかと考え始めたんだ。声を持たなかった自分に、今になって声を与えたくて。
自分がゲイだと自覚してから、宗教とのかかわりは?
神を信じる気持ちは今でも変わらないけど、かつて僕が所属していた南部バプテスト教会とはあまりつながりはない。福音派のキリスト教は宗教的な奉仕活動に基づいた宗派で、知性よりも感情的なつながりになりがちだ。僕はひとりの少年として、そして大人になってからも、内面的な部分で宗教と向き合ってきた。僕にとって信仰はアートとかなり似ていて、その創造への衝動は人間の心の奥深くから生まれるもの。その情熱が信仰へ向かう人もいれば、アートへ向かう人もいる。自分をゲイだと認めて受け入れたとき、それまで抱いてきた信仰心が大理石の床に落ちたワイングラスのように粉々に砕け散った。教会では、敬虔な信仰心を持ち、神に祈れば、神が僕を同性愛者から非同性愛者へと変えてくれると説かれた。でも、性的指向が変わることはなく、結局、神が僕を変えるほどの力を持たなかったのか、またはこの葛藤が僕をよりよい人間にするという理由で、惨めな気持ちのなかに置き去りにすることを選んだ、という考えに行き着いた。福音派では、信者になるためには“生まれ変わる”必要があって、これまでの人生を葬り、キリストとともに新しい人生を受け入れることだと説いている。 当時、指導者だった人から“同性愛者であることを抑制しなければならない”と言われたとき、僕はもし同性愛者であることを抑えこまなければならないのなら自殺するしかないだろうと答えた。
オーディエンスが、この作品からどんな意味を見出すと思いますか?
この本の持つ意味は、見る人によって変わるだろう。写真の力強さに惹かれる人もいるだろうし、70年代後半から80年代初期の雰囲気やスタイルに興味を持つ人もいるだろう。そしてストーリーに共感する人もいると思う。僕のもとには若いころに同じように苦しんでいた人たちからたくさんのメールが届く。だから、今この時代にも、信心深い環境のなかで同じ悩みを抱えている若者がいると思うんだ。
被写体からは美しさや若さが感じられます。写真家としてどんな被写体に惹かれますか?
美しいものに強く惹かれるけれど、本当の美しさは内面に宿るということも十分理解している。宗教的な環境で育ってきたからなのか、被写体の内面的なストーリーに興味がある。この20年、ケンタッキーに住む僕の家族を写真におさめてきた。一番下の甥たちと姪が、幼少期から思春期、そして今、大人へと成長していく姿にレンズを向けてきた。写真に写る幼い姿を見て、彼らが自分自身への理解を深めてくれたらと思っている。自分にもそんな記録がほしかったよ。
ひとりの人として、そしてアーティストとして、今回の写真によってどんな変化があった?
“Jesus Days”の写真のおかげで、昔の自分をより温かい目で見られるようになった。また20代のころのように同じくらい自意識を感じない自分でいられたらと思った。70年代から80年代はじめに撮っていたような写真をまた撮りたいんだ。  
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08.25.2013

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