Lost Boys in the South

ART/CULTURE

Lost Boys in the South

マイク・タイラー インタビュー

Interview: Yu Yamaguchi / Photography: Ports Bishop / All Artwork Courtesy of Mark Taylor

自分が生まれた南部の辛い現実や人間の醜い面を風刺のモチーフにするマイク・タイラー。コミックやZINE、パンクに影響を受けてきたスタイルの内側を追求する。

どんな子供時代だった?
   フロリダ出身で、80年代の典型的な鍵っ子だった。エアフォースに在籍していた父親が大学に通うために、2歳のときにアラバマに引っ越した。林のなかのトレーラーに暮らしていたから、周りには子供があんまりいなかった。かわりに犬がいた。両親はいつも働いていて、おまけに父親は大学にも行っていたから、ひとりの時間が多かった。父親が大型のコンピュータ用紙をよく持って帰ってきた。父親は製図技師でもあって、よく絵を描いていたから、僕も絵を描きたくなった。鉛筆を手に持てるようになったときには、ドローイングを始めた。そうやって他に何もすることがないとき、いつも絵を描いていた。マッド・マガジンにはまり、そのうちコミック・ブックにはまった。70年代から80年代にかけて、ジャクソン5のアニメとか、(「トム&ジェリー」の)ハナ・バーベラ・スタジオのアニメとかね。不思議なことに誰も覚えてない「ドラック・パック」というアニメ作品があった。古典的な映画に登場するモンスターたち、たとえばドラキュラとかオオカミ男のティーンエージャー時代のキャラクターが登場して、バンドをやったり、犯罪を解決したりする。それが好きなアニメのひとつだった。13歳までアラバマにいて、父親が大学を卒業したからアイオワに引っ越した。フルタイムで働きながら通学していたから長い時間がかかった。うちの家族は、とにかく南部気質で、アイオワに引っ越すと同時に南部に戻りたくなって、アイオワでの生活は続かなかった。それでフロリダに戻ったんだ。
レッドネック(農作業のせいで首の後ろが赤くなることから、所得や学歴の低い白人を呼ぶ蔑称)たちのシリーズを描いているけれど、タイトルはあるの?
   まだ決めていないけれど<ロスト・ボーイズ>という映画がなかったら、それをタイトルにしたと思う。ピーターパンの原作で、ピーターに恋したティンカーベルがウェンディに嫉妬をして、ロスト・ボーイたちに、ウェンディは悪い鳥で撃ち落とされないといけないと囁くんだ。それでウェンディはロストボーイのひとりに弓矢で撃ち落とされる。あとになってピーターがロストボーイと話をして誤解を解き、彼らが謝って終わるんだけど、このストーリーが表現したような裏切りは、南部の貧困層が、自分たちの貧困の問題や、文化の喪失の原因は黒人にあると考えさせられていることに似ていると思う。本当の原因は黒人じゃなくて、資本主義や富裕層が貧困層を利用しているアメリカ社会の構図にある。だからこれからロストボーイズも描くつもり。
作品の表現方法はどうやって選んできたの?
    いつも画家になりたかった。でも、画家になれたと思ったのは、つい最近、それも1ヶ月くらい前のことだと思う。スクリーン・プリントという手法を発見する前、ティーン時代に油絵をやろうとしたこともある。それまでは12歳くらいから描き始めたコミックが一番好きだった。父親がよく土曜日にも出勤していて、よくオフィスに一緒に行った。自分のホラー・コミックを持ってね。でもあるときからコピー機を使えなくなって、他にプリントする方法を思いつかなかったから描かなくなった。何年か経って、アラバマで、ZINEを作っていたおかしなやつらと会うようになった。その頃、自分の頭のなかで、パンクや成熟したアーティストたちはZINEを読み、不真面目な人たちがコミックを読むという変な構図ができあがっちゃった。フロリダに引っ越し、パンクの友達が初めてできて、紙を盗むことが簡単だということを覚えた。それで友達と音楽についてのZINEを作り始め、徐々に自分のドローイングを使うようになった。何年も経って、20代になってからは<Scenery>というタイトルのZINEを作った。これはどちらかというと90年代ならではの、音楽やパンクはあくまでも背景にあって、内容はどちらかといえば政治的なことや個人的な紀行などを中心としたものだった。コミックを使ったZINEより、使っていないもののほうが増えた。2001年にプロビデンスに引っ越して、スクリーンプリントを始めた。プロビデンスの文化通貨みたいなものだから。ライトニング・ボルトのブライアン・チッペンデールや、マット・ブリンクマン、ジム・ドレインといったアーティストたちと出会って、彼らのおかげでルールはないということを学び、コミックとZINEが対立するような考え方を捨てることができて、ふたつをひとつの表現方法に融合することができるようになった。
あなたにとっての音楽とアートは、どんな関係性をもっているもの?
   パンクとアートにひとつ言えるのは、どちらをやるにも誰の許可もいらないし、トレーニングもそれほど必要ないってこと。参加するためのハードルが低いし、勇気もそんなにいらない。パンクをやりたければレコードを少量プレスして、友達にジャケットを作ってもらえばいい。でもみんなそこから育って、去っていく、というとスノッブに聞こえるかもしれない。パンクが嫌いになったわけじゃない。でも何年もかけて技術を身につけようとしてきた。昔はひどいジャットをたくさん描いたよ。
あなたの作品には文化の批評的側面もあるけれど、ユーモアもある。
   パンクに近く育ったし、自分のアプローチにはパンク文化の怒りやルックに影響を受けている。南部の文化は、歴史修正的な部分をのぞけば、自分にとってはいまだに重要な存在で、たとえばアラバマには州全体で人口が400万人しかいない。ニューヨークは市だけで800万人もの人口がいる。ジョージア、ミシシッピ、サウスキャロライナ、フロリダといった南部の地域は、美しい水辺や林がたくさんある一方で、アメリカでも一番対立の激しい場所でもある。そして土地はデベロッパーや宗教右派にとられてしまっている。黒人に対する不信感が、人々が抱える怒りの大きな原因で、それがなかったらきっといろんなことが変わっていたはずだ。僕の作品にユーモアがある理由は、ユーモアはアートの形態としては、ある意味もっとも意義のある部分だと思うから。笑うことができなかったら、人間はいつも壁を殴り続けることになってしまうから
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  • Ports Bishop

02.18.2015

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