STYLE/DESIGN
KOKESHI REINTERPRETED
House Industriesが作るこけしの積み木
- Text: Periscope / Translation: Kana Ariyoshi
海外では、その存在をほとんど知られていないこけしだが、最近アートの世界でこけしをモチーフにしている作品を目にすることがある。そんななか、デラウェア州を拠点とし、そのユニークなフォントで広く知られるデザイン会社House Industriesの積み木コレクションにこけしシリーズが登場した。会社の創設者のひとりで、日本でもおなじみのデザイナー、アンディ・クルーズにその理由を聞いてみた。
- こけしとの初めての出会いは?
- 妻のステフが、地元の中古品セールで、4才になる娘のエヴァにこけしを買ったんだ。それから、いろんな形や大きさの独創的で伝統的なこけしを集めるのが娘の趣味になった。エヴァのベッドの上にある棚がこけしでいっぱいになり、置けなくなった伝統こけしはリビングルームに飾ってもいいということにした。そうしたらそのうち妻と僕もこけしを集めるようになった。
- こけしについては何を知ってた?
- こけしのデザインやスタイルにある伝承や地方ごとの特徴があるということ以外は(ほどんど知らなくて)、僕にとってはそのシンプルな木製のシルエットと手描きの柄が魅力的だった。一体一体のこけしにちょっとずつ違いがあることがとても新鮮だった。
- 自分たちのこけしを作ろうと思ったきっかけは?
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日本で代理人をしてくれているキャノン弥生さんが、仙台での“本物”のこけし作る体験(絵付け/木材の加工)を手配してくれた。でもあれこれ考えた結果、自分たちが気に入った伝統こけしの形を、より良くするような新しさを加えることはできないと思った。もしかしたらガイジンとしての罪悪感かもしれない。だからとりあえずはオリジナルを作ろうというアイデアは置いておいて、積み木パズルという形を作ることにした。Uncle Gooseと組んで、本物になりえない何かを作ろうとするかわりに、別の木の形で伝統こけしへのオマージュを捧げることにしたんだ。
- そのこけしについて教えてください。
- 伝統的なスタイルが好きだから、木製の積み木パズルの中からアイコン的なデザインをいくつか参考にした。こけしが子ども部屋で使われるだけじゃなくて、このプロジェクトのインスピレーションを与えてくれた日本のクラフトマンが作る伝統こけしにみんなが興味を持ってくれたらと期待してる。
- 作るプロセスはどうでした?
- まずはクリス(ガードナー)と僕とで4つの系統を学んで、そこから菊を描き入れる方法を考案した。本物をそのまま平面に落とし込むためにベストを尽くした。コストを低く抑えたかったから、色は2色、積み木の数を4つに限定した。なかなか決められなかったのは、どのこけしをパッケージの正面にするかということ。それで結局決めるのはやめた。それぞれのこけしのデザインに合わせて4つの違う箱を作った。お店には大変な思いをさせちゃうけど、お客さんに気に入った箱を選らんでもらうんだ。
- 他の仕事と、今回のこけし作りはどう違うんでしょう?
- 違いはない。House Industriesの多くのプロジェクト同様、市場に出すために、時間とお金をかけすぎたかもしれない。積み木の作品から得られる本当の喜びは、大人が鑑賞用として積み木を大切にすることじゃなくて(それはそれでとても嬉しいけど)、歴史的な背景やHouse Industriesを知らない子供が、その純粋な形と色に惹かれて積み木を手に取り、積み重ねたり、回したり、並べたりし始めてくれることなんだ。