THE UNDERGROUND DREAM: THE LOW LINE

STYLE/DESIGN

THE UNDERGROUND DREAM: THE LOW LINE

地下に広がる公園建設の夢

Text: Periscope / Translation: Kana Ariyoshi

かつての高架貨物線跡を公園にしたニューヨークのハイラインは、公共化できるスペースの概念を拡大したが、今、逆に地下の使われていないスペースを公園に するというプロジェクトが進行している。<デランシー・アンダーグラウンド>と名付けられたこのプロジェクトは今、<ローライン>という愛称で知られるよ うになりつつある。地下公園建設のアイディアが進んでいるのはローワー・イースト・サイド。1903年から1948年まで、ブルックリンのウィリアムズ バーグからマンハッタンへと通勤する労働者たちを運んだトローリー・ターミナルの跡地である。これを実現するために、プロジェクトを考案したデザイナーの ジェームス・ラムジーをはじめとする友人のグループが非営利団体<アンダーグラウンド・デベロップメント・ファンデーション>を設立し、2014年から 2015年にかけての完成を目指して計画を進めている。ジェームス・ラムジーに話を聞いた。

Q. どうやって地下に公共スペースを創るというアイデアを思いついたのでしょう?
ニュー ヨークの歴史にずっと関心があって、3年ほど前に、ニューヨーク都市交通局(MTA)に勤めていたというエンジニアと一緒に仕事をしたときに、ニューヨー クの地下に使われずに廃れているスペースがあると教えてもらった。信じられないくらいおもしろい話だと思った。なかでも最大で、また一番迫力のある場所として教えてもらったのが、今<ローライン>にしようとしている場所で、たまたまそこは自分の家の近所だった。そこからアイディアが浮かんだんだ。ニューヨークは常に進歩的な都市だし、商業や発展、そして利益をあげることが物事のベースになりがち。そのせいでニューヨーカーは、他の街に比べると、自分たちの街や建築環境の歴史にはあまり気をとめない傾向にある。でも実際はニューヨークは古い街で、地下にはたくさんの歴史が眠っている。どこに目をやればいいのかさえ知っていれば、昔からあるニューヨークの姿を見つけることができる。そんなニューヨークの考古学的な性質に強く興味をかきたてられる。
Q. ハイラインとの関係は?
類似性はたくさんあるけれど、このコンセプトを考え始めた時、特にハイラインに強くインスピレーションを受けたというわけではなかった。ただ、ハイラインはニューヨークにある使われていないスペースを、よりクリエイティブな方法で活用したという意味で、僕も含めて多くの人に公共スペースのあり方をより大胆に考えさせるきっかけをくれたと思う。
Q. これだけの規模のプロジェクトには乗り越えなくてはならない障害があると想像できるますが、実際に可能だと思いましたか?
障害はある。最初は単なるクールなアイデアだったんだ。そこから、考えれば考えるほど、よりおもしろくなった。実際にデザインをして、どんな空間になり、どんな感じになるのかと考え始めた。それから政治家にコネのある友人に話して、まずは市長の事務所の人たちと何度か話し合いの場を持てることになり、最終的にはMTAのトップに行き着いた。どんなプロセスを踏むべきなのか、どんなことが関わってくるのか、行政の役人と何を話せばいいか、何もわからずに、実際に行動に移すことにして、彼らに話をすることから始めた。そのプロセスを通して、これからどうすべきなのかの道筋が見えてきた。
Q. このプロジェクトを実現できると思ったのはいつでしたか?
道のりは長い。最初は個人的な興味として、おもしろくてクールなことだと思って考え始めた。いろいろな友人に話すほど、みんなで協力して実現させることができそうな気がしてきた。特に、一緒に団体を立ち上げた二人の友人、R.・ボイキン・カリーとダン・バラシュがいる。ボイキンは僕の古くからの友人で政界に強い人脈を持っている。ダンも旧友の1人で、非営利団体と市政に関して豊富な経験がある。二人とアイディアを詰めていく中で、僕たちはこのプロジェクトを実現させるための団体を設立することを決めた。非営利団体の立ち上げに関しては、ハイラインの立ち上げメンバーが、当初からアドバイザーとして多くのヒントを与えてくれた。ハイラインの発起人であるジョシュ・デービッドは、僕がコンセプトについて最初に話した相手の1人だったんだ。
Q. 大規模で困難な一大プロジェクトですが、何に動かされているのでしょう?
まずニューヨークの歴史を探求できるということ。そしてデザインを探求し、このプロジェクトの未来の姿を想像できること。意義のあることができるということ、そして、地元のコミュニティが楽しめるランドマークを創る、ということに意欲がかき立てられる。
Q. ニューヨークのような場所で公共スペースの持つ役割とは?
ニューヨークは格子状につくられた街で、スペースはもうあまり残っていない。現存のスペースはだいたいにおいて開発されてしまっている。だから他の都市に比べて緑地も少ない。特に、ローライン建設予定のこのエリアは、ニューヨークの中でも最も歴史的な地域であると同時に、オープンスペースという点ではもっとも疎かにされてきた地域でもある。都市開発の観点からすれば、何ができるかという疑問の答えを再定義する可能性も秘めているし、そのうえ、この重要なエリアが切実に必要としている空間を創り出す可能性があるプロジェクトなんだ。
Q.普段、アイディアはどこから得ていますか?
奇妙に聞こえるかもしれないけど、アイディアやデザインのひらめきを得るのは、寝ている時なんだ。だいたい何かを考えながら眠りについて、その夜のうちに、どこかの空間の中を歩き回っている夢を見る。そのプロセスのなかで、いつしかデザインしてしまっている。
Q. 自分がこのプロジェクトにとりつかれている理由を考えることはありますか?
結局、僕はアイデアを思いついた、というだけのことなんだ。そしてそのアイデアについて考えれば考えるほど、それは魅力的な最高のアイデアで、僕はそれを実現させられる立場にいるってこと。もし僕がやらなければ、誰がやるのか? もし今やらなければ、いつやるんだろう?って。これは世代に一度というくらい稀なチャンスなんだって思うんだ。
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12.05.2012

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