WE CAN DO IT!

ART/CULTURE

WE CAN DO IT!

DIYなインターネット・テレビ・チャンネルがデビュー

Text: Periscope / Translation: Kana Ariyoshi

ディレクターのピーター・グランツが、インターネット上にインディペンデントなネットワーク、 WCDIを 立ち上げた。シンガーソングライターのベッキー・スタークとカトゥーニストのロン・リージ・ジュニアとともに制作した“We Can Do It!”(僕らならできる!)と題されたインタビュー・シリーズがプレミア公開された。インタビューでは、ベッキーが人形劇のセットに友人を招いておしゃ べりしたり、ふざけてみたり、クリエイティビティや作品について語ったりする。シーズン1のゲストにはOK Goのダミアン・クーラッシュ、ジョン・C・ライリー、アンドリューW.K.といったお馴染みの名前が並ぶ。今回はピーターにこのプロジェクトの誕生の きっかけを聞いてみた。

シリーズの予告編を見ました。
あれは、ショーのなかで、楽しかった瞬間のひとつだった。あの曲は、番組のために録音したテーマソングなんだけど、OK Goのダミアン・クーラッシュがギターを手にとって、その場で覚えて一緒に歌ってくれたんだ。
というと、自然な流れで?
そう。ジョン・C・ライリーが出た回にも、そんな楽しい瞬間があった。俳優としてのジョンは、変幻自在にいろんな役を演じることの天才だから、それについて聞いてみた。そしたらジョンは、マジック・トリックを見せてくれた。
この“番組”はどうやって生まれたの?
ちょっとミステリアスな始まりだった。ベッキーとロンと僕は10年以上前からライブ・パフォーマンスやビデオをやってきて、ルーツはそこにある。ベッキーと僕は10代のころからコラボレーションしてきたし、ロンとも長い付き合いなんだ。2011年に、あるウェブサイトから、作品のシリーズを制作するという依頼を受けた。ベッキーのアパートで7人のゲストを撮影して、編集作業に取りかかろうとした矢先にそのウェブサイトが倒産してしまった。だからしばらく放置せざるを得なかった。どうすればいいか分からなくて。でも自分たちのライブ・パフォーマンスで映像を使ってみたら、オーディエンスのリアクションが良かったから、自分たちで公開することに決めたんだ。6月に自由な時間ができたから、オーディエンスと共有したい部分を、「エピソード」という形に編集した。それを僕ら3人で見た時に、「ネットワーク」という形でウェブサイトを作ることに決めたんだ。だから、テレビやラジオのネットワークっぽくWDCIって名前にした。毎週火曜日に新しいエピソードを公開していく予定。
オリジナルのコンセプトは?
もともとインタビュー・シリーズの予定だった。登場するのは、過去に一緒に仕事をした人や友だち。家に来てもらって、いろいろ試しながら撮影した。まじめな話になることもあれば、即興で遊びで作ったところもある。ベッキーや僕が前から考えていたアイディアを実現したものもあるし。だからインタビュー・シリーズとプラスアルファということになる。
テーマは?
クリエイティビティと独立性とDIYだ。もともとの計画が中止になって、お金はもらえずじまいだったけど、今となってはインディペンデントなプロジェクトとして自分たちの独創性を追求できるし、これからどうなっていくか試せるわけだから、結果的にはよかった。もともとのコンセプトにはなかったコメディ要素やバカげた寸劇みたいのも入れこめるしね。
全体的にテレビシリーズのような雰囲気が流れてるのは?
頭の中のアイデアをまとめるのにちょうど良かった。ある期間にわたって、7人のゲストを迎えて撮ったものを20エピソードに落とし込んだ。視聴者が気に入ってくれて、続編を望んでくれたらいいと思う。番組に出たいと言ってくれるゲストがいるから、それを撮影して、シーズン2にする。個人的に、最近、サスティナブルなプロジェクトを作ることを真剣に考えていて、シリーズだったら繰り返しできるし、時間が経っても番組を見つけられるようなフォーマットを作ることができる。これまでミュージックビデオをたくさん作ってきたけど、別世界を作るためにエネルギーを注いでも、一度しか露出されないということにがっかりしていた。この世界にはまだまだ探求できることがあるし、永続的に存在しうるものを作りたかった。そこから、新しい作品を追加できる場所、見たい人がアクセスできる場所としてのウェブサイトこそ僕らの“ネットワーク”だという考えに行き着いた。インターネット上の自由を制限しようとする勢力がいて、将来的に自由が制限される可能性はあるけれど、今のところ自由にウェブサイトを作ってネットワークと呼んで、ワーナー・ブラザーズやNBCといったネットワークと同じ視聴者ターゲットを相手にできる。そのことがエキサイティングだ。やりたい仕事やずっと作りたいと思い続けていたシリーズが山ほどあるんだ。
これまでの仕事の経験から生まれたってこと?
お役所的だったり会社組織での仕事のプロセスへの欲求不満は多少ある。でも一番のインスピレーションになったのは、かつてはメジャーレーベルにいて今はインディになったOK GoやアンドリューW.K.のようなバンドとここ何年かたくさん仕事をしてきたこと。今はちょうどウィルコと仕事をしてる。彼らとの仕事には、企業組織を相手にやっていたときには得られなかったクリエイティブの自由さがある。ファンの存在とリスペクトしてくれる人たちがいるからできること。会社からコントロールされていない今こそ、彼らのキャリアの中で最高にクリエイティブな仕事ができていると思う。テクノロジーによって流通が変化し、可能性も変わった。僕みたいにメジャーなメディア体制の中で働いてきて、今も働き続けている人間には刺激的なことだし、そういうことが、サスティナブルで、作り手であるクリエイターたちにフォーカスをあてるインディペンデントなプロジェクトをやりたいという気持ちにさせてくれる。去年、OK Goと働いて、信頼しているたくさんの友人たちとクリエイティブなコラボレーションをして、最高のものをつくりだすことに全力を捧げ、かつスポンサーをつけることでサスティナブルなものにすることができるということを目撃した。アンドリューやウィルコも同じ。それぞれのスタイルやファンによって少しの違いはあるけれど、働いている仲間たちや制作への打ち込み方、インディペンデントなやり方で全国的なレベルで文化に影響を与えていることに、インスピレーションを受ける。彼らのやり方、そしてどれだけ楽しんでいるかを知ったことで、この番組をネットワークに売り込んだりするのではなく、インディで公開して、自分たちのコントロールを維持し、育てていく時間を大切にすることに決めたんだ。他の何かをやると決めるまでは打ち切られることもないし。
だからこのタイトルになったということ?
そう、僕らならできる。タイトルで表現した。ベッキー、ロン、そして僕だけのことじゃない。僕ら3人がやれたっていう一例であって、例え“その何か”が人それぞれ違っても、みんなにもできるという思いが込められている。
あなたはDIYのシーンの影響も受けていると思うのだけれど。
そう。インディでサスティナブルな作品を作る、という考え方は、僕を始めたくさんの人がずっと取り組んできたDIYの延長なんだ。成長した結果という意味で。こういうことを目指して働いている人がたくさんいて、始まりはDIYからきている。長いことDIYパフォーマンスに関わってきて、ライトニング・ボルトの映画も作ったということもあるけれど、僕の初めての仕事はインディ映画監督のパイオニアの一人であるロジャー・コーマンのアシスタントだった。アメリカのインディ映画界では最大の会社だったから、どうやってロジャーが若いクリエイターをたくさん雇うようなサスティナブルなビジネスを作り上げたのかを体感することができた。その経験からもインスピレーションを受けた。
肩書きにピクルス・メーカーとあるのは?
今、プロビデンスで、ワンダーランドって呼んでる家に住んでるんだ。家の前後に庭があって、パートナーのメレディス・スターンと春から秋にかけてガーデニングをしている。こうしたプロジェクトをやれているのは偶然じゃない。インディペンデントであるためには番組を作ることだけじゃなくて、あまりお金をかけずに暮らしていくこと、自分が口にする食べ物を管理しながら暮らしをしていくことでもある。メレディスはガーデニングが得意で、僕もここ何年かガーデニングをやってきた。ピクルスやザワークラウトを発酵させるのが好きということもあるけれど、そのおかげで出費は少なくなるし、食べるものならあるからと思い切ったチャレンジもしやすくなるんだ。
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11.08.2012

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