NEW BRAINでは、診断の時にはりつめたあの困惑した状態を再現したかった。当時、かなりのショック状態だったし、投薬中だったから、今では映像が自分の記憶の一部になっている。ビデオは、病気を抱えるということについての、ひとつの興味深い考え方を表現している。医者との面会、採血のシーン、放射線治療に向かう途中に福祉車両のドライバーと話す様子、医療関係の映像も多い。逆に、街をただ歩き回ったり、ストレスを解消するために泥酔したりしたときに撮った抽象的な画像も大量にある。
NEW BRAINのおかげで、インタビューを受けたり、ガンに対する意識を高めることに役立ったり、力強いアートを創ることで多くの人に関わることができた。ガンの経験から生まれた芸術的表現を集めたカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ゲフィン・メディカル・スクールで行われた展覧会にも出展した。それだけでも十分なことだけど、さらにNEW BRAINの完成版をひとつのギャラリーで展示したい。一連の作品は悪魔を解き放つようなものだと捉えてきた。今では、ギャラリー展示への試みが悪魔になった!いくつかの街でずっとあちこち探し回ってきたけど、まだ誰も拾い上げてくれない。理解できない。ガンはいろんな形であらゆる人に影響を与えてきたことだから、人が飛びつくだろうと思っていた。でもこの時代、世の中は一切れのリアリティなんて求めていないみたいだ。チェルシーのギャラリー関係者の言葉を借りれば、「ガン闘病記はもう時代遅れ、成功したいならガンで死んでこそ」らしい。