MUSIC

SEE THE WORLD GIVEN TO A ONE LOVE ENTITY

グレッグ・フォックス インタビュー

Text: Periscope / Translation: Kana Ariyoshi

最近、とみにガーディアン・エイリアンの名前を耳にすることが多くなった。Liturgy(リタジー)、ZS、Man Forever(マン・フォーエバー)といったブルックリン発のプロジェクトで知られるドラマー、グレッグ・フォックスが 率いる自由奔放なグループだ。自然派生的に生まれたコラボレーションから、いつしかバンドという形になった。現在のメンバーはグレッグ(ドラム、ボーカ ル、エレクトロニクス、アレンジ)、アレックス・ドリューチン(ボーカル、シンセ)、ターナー・ウィリアムス・ジュニア(シャヒ・バージャ)、バーナー ド・ガン(ギター)、イーライ・ウィノグラッド(ベース)で構成されている。最新のビデオ は、グレッグのツアー中の実体験に基づいているという。本人に話を聞いてみた。

「See the World Given to a One Love Entity」のビデオクリップは実体験に基づいているとか?
そうなんだ、ある程度だけど。説明するのに一番簡単で手っ取り早いから、実話に基づいてると言ってる。どうやってこのアルバムにタイトルがついて、カバーのビジュアルができたのかを伝えるための方法として。ちょっとふざけた感じだけど…ファニーなものとして受け取ってほしい。起きたことに正直でありたかったから。
実際に何が起こったの?
ツアー中にライトバンの後部座席で瞑想をしていた。ツアーの最中、何ものかと交流するビジョンをよく見ていたんだ。そしてある日の移動中、自分が野原にたたずんでいると、空飛ぶ円盤が着陸するというビジョンを見た。絵に描いたようなUFOだった。中から男が出てきて、こっちに向かって歩いてきた。アディダスの黄色いジャンプスーツを着たラスタだった。とても具体的だった。親しげに近寄って来て、「やぁ、グレッグ。調子はどう? ほら、新しいガーディアン・エイリアンのレコードを持ってきた」みたいなことを言って、タイトルの面を上にしてレコードを差し出した。そこには「See the World Given to a One Love Entity」というフレーズが書かれていた。ひっくり返すと、ジャケットには僕にレコードを渡すヤツの姿が描かれていた。
でもそれは無意識に自分が創り出したものだとは思わない?
違うとも思わないし、だからといって必ずしもそうだとも思わない。分からない。あの時まで、頭の中にあんなイメージを持ったこともなければ、作ろうと思ったこともなかった。レコードのジャケットに、そんなものを使おうと思ったことも一度もない。ちょっとばかばかしいくらいのイメージだけど、でもとても具体的でもあった。
自分の意識のどこかにあった可能性もある。右脳が左脳をちょっとからかってみたのかもしれない。この経験は、全体的に、ロバート・アントン・ウィルソンが自叙伝の「コスミック・トリガー」の中で描く経験に似ている。彼は人生のある時期に、シリウス星系から来たエイリアンとテレパシーで交流していると確信していた。しかしその後、その正体について思い込むのはやめて、ただ異常で、興味深く、ファニーなものだと受け止めることにしたんだ。
それで、ユーモアを交えてこのストーリーを再現することにした?
そういうこと。100%まじめに受け止められるようなものでもない。でもその一方で真剣にも受け止めている・・・。だってあることが起きて、それが何だったとしても、クリエイティブにとらえたかった。主観的な体験以外のものにしないまま大切にしたかった。自分にとってはとても意味のある経験で、現実で具体的に何が起きたかってことは、比較的重要じゃないんだ。
実際に曲を作る前からすでにタイトルがあったということ?
タイトルとデザインがあって、あとは音が出てくるのを待っていたような感じだった。熟すのを待っていた。僕らが使ってきた枠組みのために、いわゆる楽曲を演奏していたわけではなくて、ただ絶えず変化し続けるプロセスのなかで、曲の構成要素を演奏していた。そんな中ついに、ツアー中の2011年11月にアラバマのバーミングハムでライブした夜に突然起こったんだ。「ワオ、できた。これだぞ」って。しばらく取り組んできて、違うことも試してみて、ちょっとずつ頭がでてきて、最後に全体が現れた。ようやくタイトルが曲に出合ったんだ。
ガーディアン・エイリアンの始まりは?
ソロのショーをやるように頼まれるようになって、そのたびにまわりの人間に一緒に演奏しないかって声をかけた。そうやって形になり始めて、特にアレックスとターナーのように、決まった顔ぶれが参加するようになって、彼らが参加することが意味を持つようになってそれが定着した。最初の一年は特にワイルドだった。ときどきボーカリストが2人いたこともあったし、違うメンツがベースやサクソフォン、そしてその場だけの楽器を演奏したりした。複数のドラマーがいたこともあった。そうやってきわめて自然な流れから生まれた。魚が水のなかから這い出てくるみたいに、ゆるやかな進化の中で形作られて、最終的に4人組に落ち着いた。シンセ担当の(フューチャー・シャトルの)カミラ・パジェット・コールズと。しばらくしてからちょっと再編成して、3人組でいくつものショーに出て、それから立て続けにバーナードとイーライが加わって今のメンツになった。
今は固定メンバーのバンドになった?
可能な範囲で一番固定したという程度には。
ビデオを作るプロセスは?
マティ(スターリングのマット・マーリン)が監督した。朝4時に起きてブルックリンのプロスペクト・パークとグリーンバックで一日中撮影した。関係者のみんなはとても協力的で優秀だったし、撮影していて本当に楽しかった。ビデオを見たら分かると思うけど、かなり楽しんで撮影していた。バンドのツアー中の8月にマティと一緒に大部分の編集をした。ガーディアン・エイリアンかスターリングのライトバンの中でファイナル・カットの作業をして、マティが操作するんだけど、僕がアイデアを投げて2人が気に入ったものをつなげていった。マティはすばらしい仕事をしてくれた!本当に楽しい作業だったし、映像の編集とその全体のプロセスについてかなり勉強になった。映像を通して人とコミュニケーションをとれるってかなりエキサイティングなことだし、特に言葉の壁を超えられるってところがね。
「ウォール街を占拠せよ」のデモに深く関わっていたけれど、最近の政治的なスタンスは?
政治的には今も同じスタンスだと思う。当時、ズコッティ公園でのデモに参加していた時に定期的に連絡を取っていた人たちとはもうやり取りはしていない。ズコッティ公園では食事の配給をしていた。みんなが食べ物を持ってきて、僕はたまたまキッチン担当をすることになった。正直言うと、最終的にはまわりのいろんな考え方にうんざりするようになった。
「ウォール街を占拠せよ」で一番引っかかったのが、“私たちは99%だ”というスローガンだ。確かに理解できるけれど、そのメンタリティには賛同できない。癒しへの最良の方法は、僕らは99%じゃなくて100%なんだということを本当の意味で理解する必要がある。世界で起こっていることを考える時、世界をまるでひとりの人間だという風に考えてみる。世界が抱えている問題は、ひとりの人間が抱えている問題で、その人間がどうやって問題を解決するのか?ということ。同時に、多くの人にとってウォール街は企業欲の象徴だ。微視的なレベルでは、そこには経済的に、政治的に、そして社会的に取り組むべき深刻な問題がある。道教の教えによると、世界は本当の意味で変えることはできないし、世界はいつだってあるがままの姿でいる。微視的な見方を超えてしまえば、そのままで完璧なんだ。僕らはこの世界で何か間違ったことが起きている、と問題を認識する。僕らが生きている世界では、人間的なレベルで、お金を持って、食べて、家やものを所有しなきゃいけない。それを否定しようとしているわけじゃない、それが人間で、僕らは人間なんだから。でも同時に、ホリスティックな考え方を個々の人間の日常生活に取り入れることもできるし、助けになると思う。“私たち”対“彼ら”として物事を考えるのではなくて、そこには“私たち”しかないということ。この考え方がどれくらい現実的かは分からないし、スペクトラムを埋めるのはあらゆる種類の人間なわけで、でも全スペクトラムのなかで、この考え方が、僕の参加のやり方なんだ。
レコードの話に戻るけど、自分の世界観が反映されていると思う?
こういう風に世界を見たいという姿勢が現れていると思う。いつもそんな風に見ることができているわけじゃない。いつも理想の自分でいれるわけじゃないし。自分の理想像があっさり放棄されることもよくある。でも、自分の理想を意識している時は、自分のために物事がうまくいく傾向がある。実際、ほとんどいつも。いや、いつもだ。理想像を気にかけている時や、意識したり自分の呼吸に集中しながら振る舞うことができている時は、普段とは別の形で物事がうまくいく。普段の生活にそうした考え方や意識を取り入れることが、前進していくのに大切なんだ。個人的にレコードのタイトルは考えそのものに深く響いている。「See The World Given To The One Love Entity」の「ひとつ」という概念は、個々の存在やその他の要素によってばらばらになるし、世の中を分ける方法はいくらでもある。でも、それでも世界ひとつの存在だ。例えば、僕のことを「足と足」とか「腕と腕」とか「頭」とは呼ばない。体内の5兆個の細胞の代わりに、みんなはグレッグとして認識する。この考え方はいろんなことに適用できる。この世界で生きていかなければならない。そこでもうひとつ大切なのがバランスなんだ。食べて、生きて、小便して、排便して、セックスして、ドラムを叩いたりしながら、同時にこのメンタリティを維持する。だって「ひとつ」にたどり着けば、自分なんていう存在は、この世界には存在しないことになる。正直に言うと、僕はこの世界に存在したい!こうして存在できることに感謝しているし、ドラムを演奏するのが本当に好きなんだ。この世にいる間は、肉と骨でできた自分が、歩き回ってはバカなことをして、「ひとつ」について考え、心に思い描き、概念化することで、僕らは100%なんだと気づかせてくれるんだ。
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12.25.2012

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