BRIDGING THE NATIVE AMERICAN COMMUNITY AND FASHION

STYLE/DESIGN

BRIDGING THE NATIVE AMERICAN COMMUNITY AND FASHION

マック・ビショップ、インタビュー

Text: Periscope / Translation: Kana Ariyoshi

昨年のネイティブ・アメリカン月間でもある11月、ネイティブ・アメリカン・カルチャーに対する扱いをめぐって、メインストリームにおいて、2つのちょっ とした事件が巻き起こった。Victoria’s Secretがランウェイ・ショーでネイティブ・アメリカンをモチーフに使ったこと、ノー・ダウトのPV「ルッキング・ホット」のなかで、グウェン・ステ ファニーとメンバーがカウボーイとインディアンに扮したこと。この2つの事件は、当事者の謝罪をもって収束した。この手の議論が起きるたびに、外の社会が ネイティブ・アメリカン・コミュニティに感じるエキゾチズムと、当事者であるネイティブたちが不快に思うことの間に大きな溝があることが明らかになる。NATIVE(X)の マック・ビショップは、ブランドを通じて、ネイティブ・カルチャーをより多くの人たちに知ってもらい、ネイティブのアーティストたちのためのプラットフォームを作ることで、その溝を埋めていきたいと考えている。

ポップカルチャーがネイティブ・アメリカン・カルチャーを取り入れるそのやり方について最近議論が起こっていることについて、どう思う?
先住民であるネイティブ・アメリカンたちは、当然のことなんだけど、自分たちのカルチャーが適切じゃない方法で表現されることや、ポップカルチャーにおいて文化が表現される方法に対して、センシティブなんだ。最近では、Victoria’s Secretのショーで使われたネイティブ・アメリカンのヘッドドレスや、Gapが作った“マニフェスト・デスティニー”というプリントのTシャツ、そしてノー・ダウトの不快なミュージックビデオにまつわる騒動があった。とてもひどいことだし、こういうことがネイティブに対するステレオタイプを助長する。でも一方でこうした議論のおかげで露出が増えて意識が広がるというプラスの面もあるし、世間の人々が意見を持つ効果もある。
 人の認識を改善するという行為は、学校から始まるもの。これまでの歴史を紐解けば文脈がわかる。信じられない話だけど、わずか100年前、インディアンの子どもたちは家族から引き離されて、強制的に寄宿学校に入れられていた。その学校の標語は“インディアンを殺して、人類を救え”というものだった。こういうことが、今学校で教えられていると思う? とんでもない。先住民の歴史と現代の生活について完全に文化的な理解が欠如している。ネイティブ・アメリカン月間に、ネイティブ・コミュニティで影響力のある6人にインタビューをしたんだ。そのうちの何人かから実際の歴史と歴史の授業で教えられていることのギャップについての話が出た。僕がそこから考えたのは、ほとんどのアメリカ人が実は歴史をちゃんと知らないから、こうした理解と意識の欠如が生まれてしまっているんじゃないかということだ。
自分も学習する体験があった?
そうなんだ。コーネル大学の2年生のときに、ファッションが文化的な意識改善に最適なんじゃないかと思ったんだ。ネイティブ文化からインスピレーションを得て作られた生地を使ってショートパンツを作って、その生地がネズ・パース族の著名な指導者だったジョセフ酋長にちなんで名づけられたものであることを伝えた。みんなにネイティブ・アメリカンの指導者のこと、そして彼のストーリー、部族のことを話題にしてほしかったから。自分では良いことをしていると思っていたけど、ある日、Facebookにオジブワ族のケイレブ・ダンラップという人からメッセージが届いた。僕のFacebookのページに「自分の利益のために先住民を利用している」、「私たちをひとつのカルチャーとして型にはめこんでいる」と書き込んだんだ。それからEメールでのやりとりを通じて、アメリカのネイティブ・カルチャーの多様性について話し合った。実際に、ネイティブ・アメリカンは何百もの文化から構成されていて、連邦政府によって認知された部族は562ある。それぞれが全く違う文化的な信仰やアート、伝統を持っている。ケイレブによって、そこにファッションブランドを作る以上の大きな意味があることだと認識させられたし、ネイティブ・アーティストとコラボレーションして、彼らのストーリーを伝えるいい方法になると思った。そのやり取りから約1年後にケイレブにメールをして、それからずっと連絡を取り合っている。今では時々Skypeをしたり、ケイレブが僕のやっていることが気に入らなかったりすると電話がかかってくるんだ。だから、NATIVE(X)というブランドはネイティブ・コミュニティのいろんなメンバーと僕とのやり取りから作られて培われてきたもの。ブランドを作ってきたのは、彼らの存在があってこそなんだ。
 NATIVE(X)をやりながら、社会的使命を思い描いていたけど、過去の僕には理解が足りなかった。NATIVE(X)には、ケイレブ前とケイレブ後の2つの時代があるよねって、ケイレブに冗談を言うことがある。僕には強い意志があっても、実際にどうやって行動に移したらいいか分からなかった。ケイレブ後はネイティブ・デザイナーやアーティストとコラボレーションするだけでは完結することはないと気がついた。
バッグを作っているけど、どうやってデザインされたものかを分かってもらうという目的もある?
アートのビジネスに参入して気がついたのは、美術品を収集したり、アート市場を理解している人の数が足りないということ。それで自分で思ったんだ、「僕は何を知ってる?」って、「ネイティブ・デザインで人の関心をひくには?」って。その答えは、ファッションだった。みんなファッションには興味がある。だって、誰だって服を着なきゃいけないだろ? ネイティブ・デザイナーやアーティストがファッション業界に参入する手助けをすることが、おもしろいアイデアだと思えた。特に最近の騒動のあと、ファッション業界は本物のネイティブ・デザインを必要としている。それが露出を増やしてアート市場を活性化させるのに良い方法だと思った。ネイティブのファッション・デザインを、アート市場の入り口として考えている。ファッションは人をエキサイトさせるし、ストーリーを知れば、美術品を買う可能性はあがると思う。
PENDLETONの創業一家に生まれたことで、子どものころからネイティブ・カルチャーには親しんできたとか?
PENDLETONの経験がなかったら、NATIVE(X)は始めてなかった。ネイティブ文化と触れる機会もなかったはずだ。だからとても感謝している。幼い頃から、週末、父親と一緒に仕事について行って、ネイティブ・アメリカンをモチーフにしたブランケットのデザインに見とれていたのを覚えている。高校生時代には、父親の命名式のためにウマティラ・インディアン居留区に行った。そこで父親は「ブランケットとともに走る者」、ウマティラ語ではtsitskaneenwushuthlaという名前を授かった。祖父はネイティブ・アートを集めていたし、ネイティブ・コミュニティと積極的な関わりを持っていた祖父も同じように「善き行いをする者」というインディアンの名前を持っていた。
PENDLETONはネイティブ・コミュニティにどんな風に受け止められていると思う? ネイティブ・カルチャーをファッションデザインの中で不適切に使うような他のアパレル企業との違いは?
PENDLETONのブランケットは、今、全国のネイティブ・コミュニティで行われているパウワウ(ネイティブの集会)や通過儀礼で使われる大切な贈り物になっている。死後、他の大切な所持品とともに、PENDLETONのブランケットに包まれてに埋葬されるのが一般的になっている。
PENDLETONは創業直後から地元の部族にブランケット売るようになった。1900年代初頭には、PENDLETONのブランケットのデザイナーだったジョー・ラウンズレーが、実際に部族のコミュニティに入り込み、数ヶ月間にわたって、一緒に生活をして、その部族や地域のためのデザインやインスピレーションを得て工場に持ち帰った。PENDLETONがネイティブ・コミュニティのためにブランケットを作り、一方でナバホ族の職人が白人の観光客のためにブランケットを作っていた。何だか皮肉だよね?
 今でも、PENDLETONは、先住民の文化からヒントを得たブランケットをデザインするために、ネイティブ・コミュニティと協力して歩んでいる。ブランケット・シリーズの収益はアメリカン・インディアン・カレッジ基金にあてられている。そしてもうひとつ、先住民のシンボルや伝統、信仰を重んじたレジェンダリー・シリーズと呼ばれるものがある。PENDLETONはレジェンダリー・シリーズの広告の中で、「ブランケットひとつひとつが、PENDLETONと最初の忠実なお客様とのお互いに対する尊敬を示す永遠のシンボルなのです」と表現している。PENDLETONは先住民のブランケット・デザインの世話役的存在とも言える。100年に渡って一緒に作り上げてきたからこそ、こうした信頼関係が築かれているんだ。
NATIVE(X)の社会的使命について教えてください。
NATIVE(X)は、ネイティブ・アーティストの作品の普及に協力するために彼らと協力し、同時に居留区で暮らす子どもたちのためのアートの授業をスポンサーすることでコミュニティにも還元していく。よく人から、なぜこんなことをするのかって聞かれるけど、その答えは、大事だと思うからということに尽きる。僕らが故郷と呼ぶこの土地の最初の住民の幸せを大切にしたいから。アーティストやデザイナーが当然受けるべき評価をされるべきだと思うから。
 PENDLETONブランドを通して、僕の家族は100年以上に渡ってネイティブ・コミュニティとともに歩んできた。そして僕のネットワークと培ったやり方でネイティブ・アーティストがビジネスという世界の場で大きな声を持てるようにしたいんだ。
ネイティブの文化についての啓蒙活動にも力を入れている?
ネイティブの文化は複雑で多様だし、僕の視点から彼らのストーリーを伝えようとは思っていない。アーティストとデザイナーのために彼らのアイデアやデザインがもっと多くの受け取り手に届くようなプラットフォームを作りたい。
 アート的な視点からいうと、NATIVE(X)ではネイティブたちのアメリカの中でも、ひとつひとつの地域や部族の違いに光をあてるようにしている。例えば、南西部と北西部の部族を比べれば、アートの違いや信仰の違い、景色の違いなどに気づくと思う。僕は実際、異なる地方に行って体験できることををオンライン上に再現したくて、それがNATIVE(X)の名前の由来にもなっている。それぞれ異なる地域性がカギなんだ。

Links

NATIVE(X)
http://www.nativex.com/
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01.09.2013

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